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鏡の森 (タニス・リー)
2009-06-25 Thu 05:30
鏡の森鏡の森
(2004/10)
タニス リー

 白雪姫、ギリシャ神話、キリスト教などが複雑に絡み合い、タニス・リー独特の世界が創り出されている。

美しいベールの下に、残酷でグロテスクな顔を見ることになるが、それもまたタニス・リーらしい感じ。



以前、読もうと思って買ったものの、そのまま本棚に積まれてあった1冊。
一度チャレンジしたんですが、その時は途中で挫折し、今回最初から読み直してみました。
不思議な事に、1度目の時は退屈だと感じていたのに、今回は引き込まれるようにスラスラと読み切ってしまった感じです。

もともと、タニス・リーは好きなファンタジー作家の一人で、かなり影響も受けていると思います。
ストーリーが面白いかと言えば、ハッピーな気分にはなかなかさせてくれない作家ですが(笑)、ダークで耽美な世界観とそれを構築する美しい独特の文章に魅了された感じです。
いつも夢見心地の読後感・・・とは言え、なんとなく悪夢から目覚めた後の、もやもやとした気分なのですが。
魔王を倒して、めでたしめでたしというヒロイック・ファンタジーの対極にあるような感じですね。
架空世界の年代記風というのとも、また全然違いますし。

この「鏡の森」は、あの有名な「白雪姫」の物語がベースになっていて、それにギリシャ神話とかキリスト教などが複層構造のように重なっている作品です。
主人公は二人の女性(母と娘)、舞台は表面的にはキリスト教が信仰されつつも、地母神信仰(ギリシャ神話)が深く根付いている都ベルグラ・デミトゥ。
まるでエーゲ海に面したギリシャ風・・・なはずですが、明るい太陽の雰囲気よりも、妖しい夜の世界の方が印象的でした。

ギリシャ神話の世界って、悲劇であっても、どこか明るく開放的なイメージがあるんですが、この本を読んでいたらそれが覆った感じです。
キリスト教に支配された後なので、いわゆる中世ヨーロッパというか、暗黒時代的な感じ。
明るく開放的な南欧というよりは、中欧とか東欧のような薄暗く神秘的な風景です。

最近、ファンタジーを書く意味って何だろう?と、ちょっと悩んでいたりしたのですが、そんな悩みを見事に吹っ飛ばしてくれた1冊かもしれません。
ファンタジー的世界でリアル(現実)を追及すればするほど、今度は「わざわざファンタジーにしなくて良いのでは?」と思うわけです。
恋愛があったり、様々な陰謀があったり、人間的な悩みがあったり、社会問題があったり。
そんなものは「今、この世界」のものであるのだから、自己満足的な架空世界など創らず、まさに「今、この世界」を背景に書けば良いのではないか?
設定を細かくして、現実に似せた別世界を創造しようとするほど、そんな葛藤を抱いてしまう(笑)。

が、しかし、タニス・リーが描く世界は、見事なまでにファンタジックで、まさに夢物語。
現代のシェヘラザードと謳われている彼女ですが、鮮やかに別世界を描きつつも、そこに読者がどっぷりハマり込むことはできなくて、ある一定の距離感があるような感じです。
蜃気楼の中の世界というか、夢の中で見る世界とでもいうか、主人公に深く感情移入することもできずに、淡々と進行するストーリーをただ「見てるだけ」な気分を味わわされる。
読み終わった後は、夢から醒めたように、「あれは何だったのだろう?」みたいな余韻が残る。

それはそれで良いんだな~と、目が覚めてから思いました。
一言でファンタジーと言っても、裾野は広いですからね。
残酷でダークな世界を霞で包んで、生々しさを感じさせない神秘的なものに仕上げるというのも有り・・・というか、ファンタジーというジャンルでしか描けないものだろうと。
この「鏡の森」をリアルに生々しく再現させると、相当グロいですからね(笑)。
そもそも「白雪姫」そのものが、かなり残酷な童話であるわけですから。

というわけで、久しぶりに「ファンタジー(異界)を見た」という気分にさせてくれた1冊した。
まあ、欲を言うなら、もうちょっと装丁画がどうにかならんものかな~というのが正直なところ。
個人的な好みがあるので仕方ないんですが、こういうポップな絵柄とはかけ離れた物語ですしね。
この表紙を見て、明るく可愛い話だと思ったら大間違い・・・な内容です。
        
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